NPO法人フリースクール
阿波 風月庵 -ふうげつあん-

体験談   呪縛からの解放

少しずつだけど確実に変化

風月庵のサポート・スタッフになって、2年半が経ちました。

私はこれまで「ひきこもり」の経験がありませんし、仕事も途切れることなく、続けてきました。

しかし、物心ついた時から、周りの人たちと上手くやっていくことができずに、トラブルばかりの人生でした。おそらく、「愛着障害」の一種のような気がしていたのです。

自分から問題を起こし、怒られて、傷つき、さらに問題を起こすという負のループへと、陥っていたように思います。怖れや怒りをエネルギーとして行動を続けてきましたが、だんだんと立ち行かなくなり、追い詰められていた時に風月庵を知りました。

きっかけはインターネットのボランティアサイトです。とりあえず、話しだけでもと伺ってから、毎月勉強会にも参加し、早くも2年以上が経ちました。

一緒に居ても、とても楽なのです

参加して感じたことは、「ひきこもり」系の人たちの思考や親に対する発言が、私と実によく似ていたことです。これまで自分は誰とも似ていない、独特な人間だと思って生きていましたが、似ている人が沢山いました。ただ、彼らは表舞台に出ていなかった時期が、あったというだけなのです。

「愛着障害」にも、内にこもる型と、外に向かう型とがあるのですが、私はおそらく後者型なので、ボコボコになりながらも、社会に出続けられていたのだと思います。

風月庵に集う人たちは、多かれ少なかれ、同じような傷を持っていることをお互いに知っている感じがします。なので、取り繕う必要もなく、一緒に居ても、とても楽なのです。

それでも、なかなか空虚さや自己否定感はぬぐうことは難しかったように思います。 登っているのか、落ちているのか、わからない不安定な状況が続きます。

生きやすくなるお手伝い

私は登山が趣味なのですが、昨年からA君と、徳島の山に登っています。これまでに20カ所くらい行きました。

特に、目的があるわけではないのですが、汗を流して登り、綺麗な風景を眺めていると、自然が僕たちを癒してくれるのではないかと、思いながら、一緒に登っています。

私自身もそうなので、よくわかりますが、自己否定を続けていると非常にエネルギーを使います。

特に、何もやっていないのに、疲れている自分に幻滅します。きっと、「ひきこもり」系の人たちも、これといっては、何もしていないように見えて、疲れているのだと思います。

なので、まずはエネルギーを回復することが重要だというのが、私の考えです。エネルギーが溢れたら、動きたくなるし、それでも動かないのであれば、そういう性格(時期)なのかもしれません。

「ひきこもり」系の人たちを、動かそうとするのではなく、生きやすくなるお手伝いをした結果、自ら動き出すものと考えています。

私にも色んな事情があったから

数か月前から、私自身の自己否定する時間が、とても短くなりました。ある精神科医の先生の本がきっかけです。書いてあることは何も難しくありません。

重要なことは、

  • 人にはそれぞれ事情があるから、評価することはできない
  • 怒っている人は、困っている人である

という2点です。

この本を読んだのをきっかけに、憑き物がおちたように楽になりました。過去を思い出し、自己否定の波が来ても、私にも色んな事情があったからと、思う様になりました。他人が怒っていたとしても、何か困っているのかもしれないと思えば、同じ怒りの舞台に立たなくて済む様になりました。

思春期から、心の奥底に破滅願望が存在し続けて「どうせいつか死ぬのだから」という否定的な想いが、常々付きまとっていました。

少しずつ確実に変化している

この年になって、ようやくこの呪縛から、解き放たれたような気がしています。自己否定をしなくなると、本当に楽です。余ったエネルギーで、毎日、ランニングができるようになりました。また、お酒を、毎日飲まずにはいられず、「アルコール中毒」一歩手前?かと、案じていましたが、全く飲まなくても大丈夫になりました。

人生、何がきっかけで、どう変わるのかはわからないなというのが実感です。

私自身の生活が、まだまだ試行錯誤の繰り返しで、「ひきこもり」系の人たちをサポートするというよりかは、一緒に苦しみながら、伴走している様な感じです。「ひきこもり」系の人たちと関わって理解したことは、特効薬はどこにもないし、劇的な変化はめったに起こらないということです。

関わりを継続していくことで、少しずつ確実に変化していることも感じています。行ったり来たりを

繰り返しながら、気長に活動を続けたいのです。 EK

注;この話しは、プライバシーを守る観点から、いくつかの事例を合わせ、一般化した内容です。