ソフト面の自立支援を ~メンターに見守られて~
~どこから見ても、ひきこもりとは思えない~
「ひきこもり」といっても、今の認識と昔の認識とでは大きく変わってきています。多くの方々が「ひきこもり」を昔の認識で捉えておられるように思われます。私が活動し始めた頃の認識は、家や部屋にひきこもり、外に出られない、家族とも顔を会わせられないことが、「ひきこもり」状態だと、思われていました。
しかし今は、外出もするし、も運転され、買い物にも出かけられます。「後は、仕事にだけ行ってもらえたら」と、「どこから見てもひきこもりとは思えない」と、言った人が増えてきています。
今は、人との関わりを、明らかに回避する行動を習慣化していることを「ひきこもり」と、判断しているのです。
また、以前は精神症との区別が難しかったですが、そこの判別が出来る様になった反面、発達障害との識別が難しくなりました。
発達障がい者総合支援センター「はなみずき」「あいりす」
徳島県ひきこもり支援センター「きのぼり」でも難しいケースは、徳島県発達障がい者総合支援センター「はなみずき」に紹介すると、お聞きました。
生活困窮者支援事業
各市町村での「生活困窮者支援事業」で、将来に生活困窮者となる可能性が高い「ひきこもり」状態のご本人も対象になっています。先ずは、お近くの市町村役場福祉課に相談に行き、実情や希望を丁寧にお話ください。
幅広く援助が広がっています
先月、風月庵にひきこもり当事者ご本人が来庵されました。「まずは、話し相手がほしい」との訴えで、お話を伺いました。ご本人は「ひきこもり」というイメージは持っておられませんが、25年間程、社会とは関わっていないと、回避行動が今も続くことから、「ひきこもり」状態と判断できます。
ご自分の力だけでは、社会参加に向けては困難に見えました。長く活動をしていますが、ご本人が風月庵に来られたのは、実に2人目でした。最近、ご両親をなくされて、一人暮らしでいらっしゃるとのことで、寂しい生活をされていると思われます。
現在では、ひきこもり支援も、公的には幅広く援助が広がっています。いくつかの支援先を併用され、風月庵での支援も受けて下さればと思います。
~ 公的支援を受ける前に ~
伴走型支援
社会参加に必要なのに、公的支援ではなかなか受けられない支援とは何でしょうか?
相談、指導、情報提供、紹介など、自分が動ける人はまだよいのですが、自分一人では動くことに自信のない人が、一人で社会参加を進めることは大きな不安に満ちています。
伴走型支援を実践している団体もあります。細やかな支援を受けることは勿論ですが、どの順番で何処に支援を受ければよいのか、自分は何が困っているのかも、必要な相談として、聞いてみたらよいのです。
福祉作業所に繋ぎ、就労に向かいゆっくり進める
医療面でも、診察や投薬と共に、人間関係の学習や訓練、一人暮らしの訓練や、支援を受けながら作業所に繋ぎ、就労に向かってもゆっくり進める制度も活用できます。
地域若者サポートステーション
就労に向けての相談先としては「地域若者サポートステーション」が県内2カ所(徳島市・阿波市)で活動されています。
ゆっくりと自分に合った就労の仕方を
福祉就労施設でも、障害者だけに限らず、長期ひきこもり者も支援対象と考えて下さる様になり、就労支援事業として、2年間支援を受けながら、ゆっくりと自分に合った就労の仕方を、一緒に支援してくれます。
働き続けるのに必要な幅広い相談
また、ハローワークでの相談も、その人の事情に応じた対応になっていて、働き続けるのに必要な幅広い相談にも応じて下さる様に利用し易くなってきています。
そんなことから、長期にひきこもっていた方でも、社会参加への可能性は大きく広がりつつあることを知っていただきたいのです。
~自分に合った服(やり方)に仕立て直す~
自分に合ったやり方に仕立て直す
ただ、そこにつながるまでのことが難しい方も、まだ大勢いらっしゃいます。人間関係の学習と訓練が必要です。言わば、生き方や考え方を、自分に合った服(やり方)に仕立て直すことなのです。
自分が着易い服は、自分がデザインして、仕立て、着用しながら変えていくと一番いいと思いませんか。
風月庵が大切に考えるのは、支援という枠内で共に生きる。一人で生きることへの自信を持って生活できる暮らし方に出会ってもらうことを目指しています。そのことを、『ソフト面の「自立支援」』という言葉で説明してきました。
メンター=生き方を見守ってくれる先輩
次に、自分が子どもの時から今まで、どうしてこの生き方や考えになってきたのかを、知りたいと思いませんか? これからの人生をどう変えていくことが、自分らしい生き方となるのかを、学び、身につけたいと思いませんか?
自分と同じような経験を持った先輩が、自分らしい生き方にまで、どう出逢ってきたのかを、直接に知ることが出来るのは貴重です。
そんな自分の生き方を見守ってくれる先輩のことを「メンター」といいます。メンターになってくれそうな人と出会っていくことも、大きな人生の財産になります。
ご本人の興味や成長に応じて、内容や方法を決めます
参考に、風月庵クラスの学習内容をご紹介します。
◎SST→会話場面を想定し実際にやってみる
◎ゲスト対談→ゲストに生き方・職業を聞く
◎自分研究→自分の心の特性を知り、対応策と自己の育て直しを実践
◎愛着→回避性愛着スタイルの特性とひきこもり特性を比較し、回復技術を学ぶ
◎グループ→スポーツ・講演会・カラオケ・見学・訪問
◎家族→家族のコミュニケーション特性を知り、今後の対等な関係作りを実践
◎男女/性→男女の思考の違いや結婚生活等
◎会話/文章→会話の展開の仕方・文章表現
◎体験→苦手なこと・したいことを体験する
クラスは、ご本人の興味や成長に応じて、スタッフと他メンバーと共に、内容や方法を決めて、進めます。
また、進めていく中で修正もします。 かぜ