NPO法人フリースクール
阿波 風月庵 -ふうげつあん-

相談しない家族

個別面談や家族会で、話題に出す提案に、「相談をしてみてください」と、お願いすることがよくあります。

相談しながら、色んなことを自分で決める

この「相談」が、「尋問」や「要求」や、場合によっては「責任追及」になっていたりするので、この「相談」ということを改めて考えてみたいと思います。

先ず、本人が家族と相談しながら、色んなことを自分で決めることが出来ていますか?

ご飯は何を食べるのか?

後片付けは、誰がするのか?

何時に寝て、何時に起きるのか?

風呂にはいつ入るのか?

その片付けは、どの様にするのか?

お小遣いはいくらで、何がその対象なのか?

親御さんにお聞きしましたら、「今までもそうしていましたから、気を利かせて、その様にしています。」との返事です。

「何故、どうしようか?と相談されないのですか?」と、私が尋ねますと、

「聞かなくても、別に問題ありませんから」「なんて聞いたらよいか分らないので」とのお返事が返ってきます。

相談はできていない様です。

「生活依存」としての視点

ある見方では、成長している筈の若者に、いつまでも同じ対応・同じ提案というのは、その子の成長に応じた対応が出来ていないといえます。

そう考えると、「ひきこもり」とは、親と子の関係が、「生活依存」状態になっているということではないでしょうか?

結局、子どもは、自分で何一つ決めることなく、親が決めたことを甘んじて受けているだけなのです。

生活力のない自分が文句を言える立場ではないと、自分の気持ちや考えを言えないことが、言わないことが、当たり前お、ご本人は信じておられるようです。

自分で物事を決められないのは、親から自分が決めることを任せてもらえていないので、親子の間で安心関係が育っていないからと判断できます。

それが親に「僕は自分で何も決めさせてもらえなかった。いつも、父さん、母さんが決めていた。」と、言葉に出来て、自己主張できる様になると、やっと、安心関係が育ち、自分の気持ちや考えを言えるようになったということです。

自分流の言葉で話せる

まず、自分のことを自分流の言葉で言える。

次に、言った内容が相手にどのくらい伝わったかを計る。

さらに、相手のいう意見や考えを、そのまま受け止めて、認められる。

その上で、自分と相手の言い分の違いと

共通点を考慮し、第3の提案が出きる。

そのやり取りの繰り返しを重ねることで、お互いが楽な安心関係になっていくのです。

その結果を、お互いが気持ちよく受け入れ、安心して相談出来る関係が育つのです。

こういう一連の流れが、時間をかけて進めることが出来て、「相談」と云えます。

「決めるのは子ども」と約束

親が「申し訳ないけど、来月からお小遣いを半分にさせてもらいたいのだけど、いいかな?」との内容は、「相談」とは云えません。

これはおそらく命令か通達という類のものになっています。

その後で、いくら事情や言い訳・理由をつけても、本人に選択肢はないと思われるのです。

この内容を、どう替えれば「相談」ということになり、関係が育っていくのでしょうか?

まず、「決めるのは子ども」と約束します。

次に、親側の今までの事情と努力の跡を説明します。

そして選択肢を3つ以上提案します。

1、今の生活を維持し、小遣いを半分に

→①足りない分は自分の貯金を崩す

→②内職・バイトを始め、お小遣いを補填する

→③福祉作業所で、お小遣いを補填する

2、小遣いをそのままに、生活を家族で切り詰めることを始める。

→①お菓子は購入・常備を半分にする

→②カップ麺は購入・常備しない

→③昼食は袋麺を自分で作る

3、他の意見もあれば考える

ので、提案して貰いたい。

お互いに考える時間を大切にする

そして、まず1週間~1か月間考えて、返事をもらいたいと頼みます。

その間は何も言いませんが、質問がある時や答えが出たなら、話し合います。

約束の日に、再度聞いても答えがない場合、提案を2つに絞って、3日間~7日間考えても

らい、返事を待ちます。

約束の日に、再度聞いても答えがない場合、提案の一つを決めて、これにするけどいいか

と、1~3日間待ちます。

その1~3日後でも返事がない場合は、その一つに決めると、本人に了解を取ります。

その間に答えが出た場合は、子どもの意見や考えをそのまま聴き、その場で、返事や話し合いの答えは出しません。

お互いに、再度考える時間を持ちます

数日後に再度話し合いを持って、いくつかのことを確かめながら、決めていきます。

・この答えは子どもの本心から出ているのか?

・親の希望だけで決めていないか?

・各提案を吟味したのか?

・誰か他の人に意見が聞けたのか?

・自分で出した他の意見はないのか?

・実行する場合の不安や心配はないのか?

・いつから始めるのがいいのか?

・子どもの今の能力で内容は実施可能か?

それらのことを子どもは考えた結果なのかどうかをじっくり話し合う必要があります。

ご本人の能力に見合った提案内容だったか?

直感でも、未熟さのある内容でも、ご本人が決めたことなら、はっきりと認めて、実践することを見守り、無理していないかを判断する必要があると思います。

ご本人の今の能力に見合った提案内容だったかどうかの見極めは、親側の責任として判断が求められます。

その為に、内容や、やり方や、期限を変更していくことも必要になってくるでしょう。

勿論その頃には、親子で安心した「相談」が出来ることを信じています。    かぜ